鴨川の西岸に佇む四軒長屋のうちの一区画を,別荘として改修した。東山連峰を背景に水面がたゆたう鴨川の風景はなにものにも変えがたく,滞在者があますことなくこの価値を謳歌できるような別荘のあり方を探った。敷地は路地奥にあり,両隣と長い壁を共有する。その時々で改修を重ねた家屋は,鴨川から差し込む光のみでは住環境として薄暗く,光井戸と坪庭を再生することが不可欠であった。玄関から階段室は柔らかな曲線を描く天井でひと繋ぎとし,転び格子越しに差し込むトップライトをバウンスさせ,静けさと柔らかな光で満たされるような空間を目指した。一方,変わらない自然としてあり続ける鴨川の風景に対し,坪庭は下屋根と木建具で囲まれたテラリウムとして計画した。主空間のある一階では,どちらの自然に対しても,木製建具によって隣接する部屋との開閉具合を調節できる。主寝室は二階に配し,眼前に広がる風景を椅子座の高さで眺めながら時を過ごす。隣接する浴室は,ガラリ戸を開け放てば外気浴スペースとなる。自然環境と一体となりつつ心身を休める,それが可能な環境を整えることに徹した計画である。