豊かな自然と悠久の歴史文化に囲まれた郊外型住宅地に建つ住宅である。緩やかな丘に沿うように立ち並ぶ周辺の閑静な家々から,緑豊かなまちづくりへの関心の高さが窺い知れる。そのようなランドスケープに呼応したおおらかな外観でありつつ,周辺から自立的な内部を抱く建築を作りたいと思った。緑が生い茂る敷地に,大きな屋根がかかるシンプルな箱がいい。その箱には日常生活に必要な最低限の機能があり,そのほとんどが2層を貫く吹抜けや腰壁を介してシームレスにつながる。南北の窓は,隣家や境界塀といった人為の介在を避けるように大きく開き,光や風,眺望を心地よく内部へ引き入れ,多様な場と光を内包する。そのような思いが,結果として低層住宅専用地域による建築制限に,大きな内的バッファとして応えることになった。