建築制限を厳しく付加される,歴史都市京都は西陣に立つ住宅である。この地特有の「うなぎの寝床(間口が狭く奥に広がりのある敷地)」形状を活かして計画を進めていった。施主からの要望はただ一つ。賑わいのある前面道路や周辺環境から切り離された「静謐な居住空間の創造」であった。そこで門扉から住宅の中心部へ至る導入をあえて紆余曲折する経路とし,坪庭,中庭を外界からの結界として二重に仕掛けることによって,この要望に応えようとした。庭から差し込む光の扱いや,内部と外部の境界,場面転換などに配慮し,白く抽象化した住空間を奥に進むにしたがってプライバシー性の高まる迷路のような空間に仕立てた。