京都市桂地区に位置する集合住宅の新築です。共同住宅という借り住まいの場を,効率性を求めたゾーニングを中心とした計画ではなく,人々の記憶にとどまる共用空間の在り方を中心に据えた計画として進めました。自然や風景を,日々表情を変えつつも人々にとっては変わらぬ慕情の対象である要素として積極的に建築内部に引き込み,一定の広さや強度,最低限の住設を確保するほかは基本的なプラットフォームを提供するのみに留めることで,持続的な建築としての余地も残しました。 中庭を介した各室への動線計画や建物外周部を取り巻くバルコニーによる外観の特徴付けなど,積極的な緑化とともに,都市生活の中での抜け感(ゆとり空間)を表現することで,一過性の時間に豊かな記憶を刻む建築となることを目指しました。