和歌山県の中部は有田市に建つ,民家の改修である。昭和20年代に建築された家屋は築70年を超え,欅の大黒柱に支えられた大屋根が悠々たる印象である。周辺にはみかん畑が広がり子供達が駆け回るおおらかな風景を,そのまま改修計画でも写し取ろうと思った。 生活の中心となるLDKを家の中心に移動し,襖で小分けにされていた田の字型の平面計画を,構造体を動かすことなく建具を取り外して解放。断面的にも天井高さを引き上げ,構造体を部分的に露わにすることでゆったりとした力強さを出した。 中庭を挟んで向かい合う離れは,親世帯の住まいとなる。庭に面するLDの開口部は,庭の景色を取り込むよう大きな木製に更新し,目隠しや調光の目的で木製ブラインドを設置した。これまで襖が閉められ暗くなりがちだったこの縁側は,家の内部に風を送り,大きく切り取った風景や光を引き込む本来の役割を取り戻した。 新たに取り付けた造作材には既存樹種とは異なるタモ材を使用し,建具意匠も格子や組子を細かく割り付けることで,改修ならではの新旧の組み合わせが楽しめる。大黒柱は,周辺に取り付いていた建具枠を取り払い,磨きをかけ,欅の美しさを復活させた。