敷地の東側には五山の送り火として知られる大文字山,西側には緑豊かな鴨川の河川敷が広がるマンションの改修計画です。東西に細長く分割した平面計画によって空間の公/私を分ける構成とし,色や素材のパターンによって各ゾーンを意匠的に印象づけています。細長いリビング・ダイニング・キッチンの形状は京都の町家の平面計画に倣ったもので,風の通りや風景への切り開きに効果的です。構造躯体となる柱や梁を壁面収納と一体的に整理し直し,梁下で色を統一的に分けることでインテリアとしての格調を高める試みをしています。既存の床や天井を下地として利用することによって総工事費を抑える計画としつつも,ヘリンボーンに貼り分けた床材や天然顔料を用いた塗り壁,キッチンエリアを取り囲むタイルの意匠などにより楽しさの溢れる空間として,日常生活を支える大きな器となりました。