京都市内の風致地区に位置するこの住まいは,比叡山を背景として2つの大屋根がゆったりと連続する外観を有する。南面と西面に接する道路は,車や通行人が多く,視線と喧騒から隔離された静けさを確保する必要があった。敷地外周部を外壁で囲い込み,中心部に大きな中庭を設ける計画とした。主たる生活空間は,大きな中庭に開いて展開される。一見,閉ざされた外観だが,外部との緩衝地帯として設けた西面アプローチや南面植栽帯では,アイアン製の格子や連続した壁越しに敷地内の植栽の賑わいを楽しめる。アプローチを通って玄関扉を開くと,正面に設けた開口部から中庭空間が一気に広がる。来客用の和室と中庭を挟んで対面する家族用の食堂・居間空間は,それぞれの開口部を開け放てば南庭まで光と風が行き交う。